金魚エッセイ
大和郡山市特産の金魚について綴りました。(2009/4)
金魚の卵・金魚の子
4月も20日を過ぎ、白い薄桃色に青空を染めて輝いていた桜の花々も、今はすっかり舞い降り若々しい新緑が空一杯に広げています。
奈良の北西に在る大和郡山の城址の桜も、また来る年の春を待っています。
かつて、松本清張が「郡山城址の桜は一見の価値あり」と賞したと聞きおよんでいますが、今年もしだれ桜は石垣にかかる天女の羽衣の如く、優雅なたたずまいをみせてくれました。又、来年の楽しみに残しておきましょう。
ところで大和郡山には桜の季節が終わり、春から夏にかけて、もう一つ自慢の種があります。それは金魚です。子どもの頃、夜店で「金魚すくい」に夢中になったことを覚えていませんか。
うすい紙を張った「ぽい」で金魚すくいをしたことを。大和郡山は金魚の大産地の一つです。金魚の飼育池が町のあちこちにみられます。
平成7年から毎年夏に、市主催で「金魚すくい全国大会」が開催されます。また、市役所では金魚すくいの出前もしております。
先日、金魚の飼育業者を訪れると、ガラス水槽が所狭しと並び、また地面にはコンクリートの小さな四角の仕切りがしてあり、その中に赤、白、黒、まだら、真ん丸い形や細身、ふわふわ尾びれ、あざやかな、ゆったりまったりした金魚が、悠然と優雅に泳いでいます。
それらをみると、私も実際に育ててみたくなり、あれにしようかな〜これにしようかな〜と迷いました。
そこで、お店の人に相談しました。初めてなら丈夫な金魚でということで、コメットという品種を奨められました。このコメットという金魚は、細身で色は赤、白、紅白の3種があり、そのなかでも紅白の模様がよいとされています。
琉金の変異したものとふなの交配からきているそうです。尾びれ、背びれなどのひれが大きく育ち、ゆらゆらひらひらと、水の中で揺れ動く様は、まさに平安朝の官女の姿、形です。お店の人の話どおり生命力旺盛で元気のよい金魚でした。
紅白模様のコメット2ペアを飼うことにしました。ブクブクだけの40センチ位の小さな水槽で飼い始めました。ところが、春も終わり近く暖かくなり始めた頃、水槽の中で追いかけっこが始まりました。
オスがメスを追いかけ産卵をうながしていたのです。そうこうしている内に、水槽の水が白く濁りよく見てみますと、小さな白い透明な粒々の卵が水草にぎっしりと産み付けられていました。
それからが大変です。親が卵を食べるので、慌てて別の水槽を用意して移しました。
それから1週間、水草の水槽のガラスの内側に糸くずみたいなものがへばりついています。中にはスイスイと動き回っているものもいます。
卵がかえったのです。100匹以上います。
金魚が卵を産み、そしてそれが孵化し、金魚の子どもが泳ぎだすなどと、想像もしませんでした。驚きと喜びの瞬間でした。
何回も産卵を繰り返し、そのたびに水槽を用意し、糸くずの赤ちゃんたちが大きくなり、6月終わりごろは水槽が6個になりました。棚もスチール製の丈夫なものを買い並べ、まるで金魚館です。
それらの金魚も、今は元気に育ててくれる親切な方に引き取ってもらい、残りの金魚を大きい透明のプラスチック製のケースで、30匹ほど育てています。
そして2年目、また卵がぎっしり、慌てて別のケースを用意し、ヒーターを設置し、数百匹でしょうか、孵化しました。さてこれからどうしたらよいのか。金魚の種はつきません。